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  • 山田はるこ

絵を描くこと6[絵を描く→探求]

絵を描くこと

さて、今回は普通に絵を描くことについて、普通にというのは、いわゆる画材[鉛筆、色鉛筆、クレヨン、絵の具など]を使って描くことです。


誰でもがイメージする描くことです。

アトリエでは時にテーマを決めて描くことがあります。

比較的良くやるのが、野菜、くだもの、お花、昆虫などをテーマにした絵です。


身近にあり、自分で見て、触って、においを確認して、と五感で感じられる対象をよく使っています。絵を描くことはそのものをよく知ることと似ています。じっくり観察していると「ああ、こんな風になっていたんだ」「ここの色は赤だけじゃなくて、黄色も混ざっていたんだ」気がつくことがたくさんあります。

普段の生活の中で、見ること、知ることは割とさらりとどんどん目がうつっていく中でなんとなく把握していることが多いと思います。描くためにじっと見るそれだけで、それまで気がつかなかった発見がたくさんあります。


私自身も高校時代にデッサンを習い始めたとき、これは「見ることの訓練」なんだなと思いました。それまでは、見ているつもりでも見えていなかった、そういう何となくだったことをしっかり意識して、分析して、再現出来るようになる。そういうことなのだなあと感じました。


そう、絵を描くことはそのものをよく知ること。つまり「絵を描く」を目的とするのではなくて、「○○を研究しよう!」とか「○○探検をしよう」とよく知ることを目的にします。


では、例えばお野菜を探求しよう!という場合


1. そのお野菜はどこに、どんなものがある?

2.どうやって食べてる?

3.どんな味がする?

4.どんな色?

5.どんな形?

6.重さは?

7.硬さは?

8.どんな触り心地?


を探求していきます。幼児さんは特に皆とても知りたがりですので、わくわく探求に向かっていけます。

1.の「どこにある?」は野菜の場合、畑で見学できれば一番ですが、畑が無い場合は近くの野菜売り場で良いんです。ちょうど、アトリエのある場所は1階に農産物の直売所があるので、ありがたくそこへ出かけています。





また、その対象への興味を持ってもらう工夫のひとつとして、「自分でモチーフを選ぶ」ことを大切にしています。たくさんの野菜の中から気に入った野菜を選び、買います。


以前選ぶこと自体が表現のひとつというように[素材編1]のお散歩アートの紹介でもしておりますが、描きたいのはどれか自分で選ぶ、そのプロセスを活動の中に入れます。そのことによって、より対象物に愛着を持って取り組むことができます。愛着があれば自然と、よく知りたい、そして描きたい気持ちが生まれ、描くことはちょっと苦手と思っている子でもよしよし、どうなってるんだろう、良く見てみよう、良くにおいを嗅いでみようなど、楽しくなります。


自分で買ってきたモノをアトリエに持ち帰り、観察します。観察といってもすぐに絵を描き始めるというより、まずは色々と上記の2~8のようなことを問いかけていきます。





幼児さんの場合は、描き出すととっても自由です。色についても、例えば赤いお花を見せていても、赤ではなくて黄色で描いてみたり、白で描いてみたり、実物と似ている色を使うことに特に関心がない子もいたりします。



モチーフがあって、見て描いてみようと言う場合でも、違う色を使うことだって決して間違いとはいえません。絵はその時々の本人が描きたい方法で描くのが一番です。「観察画」として出来るだけそっくりにと試験のような場面で求められるときには色が違っているのは場合によっては減点の対象になるかもわかりませんが、基本的に表現に間違いはありません。


ただ、本人が何となく選んでいて、色を気にしていないこともあるので、そんな風に見える場合は一声かけてみます。「このおやさい何色?」「○○君の絵は何色?」その一声で、クレヨンの色を持ち替える子もいれば、持ち替えずに「だって青が好きなんだもん」とモチーフと違う色で描き続けたり、黙ってそのまま描き続けたり様々です。違う色を使っているからといって、叱る必要はありませんし、本人の思うように表現ができればそれで良いと思っています。クレヨンで描いている時には色数も限られてはいますので、「観察してこんな色があったのに、同じ色がなかったからこの色にしてみた。」と、その子なりに発見があって、検討して色を決めていることもあります。





小学生になると、モチーフとしてそこにあるモノと全く違う色を使おうという子はいなくなります。より、本物らしく描きたい気持ちが強くなってくるのだと思います。

小学生では、本物らしく描きたい、上手に描きたい気持ちが強くなり、描き始めるも途中でめげてしまったり、また違った展開があります。本人の納得いくモノになるために、それなりの頑張りが必要になるようです。


その場合は、新しい技法を織り交ぜて描くこともあります。描いた果物やお花を切り抜いて、別の用紙に貼り付けたり、スパッタリングと言って網にブラシでしゃかしゃかと色をつけて表現をしてみたり、少し行程を増やしたり、複雑にしてみることも場合によっては納得のいくモノに近づくケースがあります。


納得のいく絵を描くことは子ども(小学校中学年以上ぐらいでしょうか正解不正解がでて、外的評価にさらされることを意識し出すころでしょうか)にとってもそれなりに難しいものです。すぐに答えの出るモノでも無く、正解なのか不正解なのかもわからない。「なんか、納得のいくモノになっていないな〜どうしたらよいか」と自問自答するような時間もまたそれ自体が良い時間のように思っています。




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