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  • 山田はるこ

絵を描くこと2 [みんな好き?]

更新日:2023年6月23日

アトリエでは頻繁に工作や手芸的なことをしますが、絵も良く描きます。

絵を描くということが表現をする上で非常に基本的な活動だからです。


誰でも絵を描くことを小さいときにはしていたと思います。

大人になってすっかり絵は描かなくなった、子どもの頃図工で絵を描かされるのは本当に嫌だったという記憶をお持ちの方も多くいらっしゃるようです。


ですが、子どもたちの多くは本当に絵を描くのが大好きです。

「私は図工って好きじゃなかったのに、我が子が好きでびっくり!」という方が多くいらっしゃいます。それはきっと皆さんも自分で覚えていないだけで、幼児期にはきっと絵を描く事を積極的に楽しくやっていたに違いないと私は思っています。


小学校の好きな科目ランキングでも、図画工作は人気の科目になっています。しかし、詳細に見ていくと高学年で急に人気が落ちる科目だそうです。

ということで、高学年から中学生の頃の記憶が強く残ると思いますので、大人になった時には「図工、美術は苦手だったなあ」という記憶になるではないかと思います。幼児期に好きだったことはすっかり忘れてしまっているというだけなのではないでしょうか。




私は子どもは本質的に全員、絵を描くのが好き!なのだろうと思っています。

「いやいや、そんなことはない。うちの子は」あるいは「うちのクラスの子たちは、あんまり好きじゃないなあ。」と思われる方もいるかもしれません。


好きじゃなくなる、積極的に取り組めなくなる理由には次のような経験が影響している場合が多くある様に思います。


1.お友達から「へんなの」とか「ぐちゃぐちゃ」と言われた。

2.園や学校で手順通りにやらないと先生に怒られる。

3.お家の人に関心を持ってもらえない。

4.自ら他の子と比較して、自信をなくす。(成長とともにここの比重は大きくなるようです。)


1番は割と保育園、幼稚園、学校、などで頻繁に起きてしまうのが正直なところかもしれません。

一度でも「へんだ」とか言われると全く描けなくなってしまう子も確かにいます。

それはとても悲しいことです。こうした状況を作らないために、私は関わる保育園やこども園では「ぐるぐるも素敵だよ〜」とか「お友達の絵にへんだなんて言わないで」ということをできるだけ子どもたちに伝えるようにしています。それでも、そういったやりとりをゼロにするのは意外と難しいかったりします。言ってしまう子もだいたい悪気がないですし、悪いことと思ってもいない発言を制限するようなことはどもたちの発達の状況から考えても難しいことではあります。


子どもはいわゆる「なぐりがき」(美術教育ではそれを「スクリブル」と言います。)という、ぐるぐる描く、運動の軌跡としての絵から描きはじめます。そこからだんだんと、2~5歳ぐらいまでに何か対象物を描く絵に変わってきます。一度ぐりぐりの「スクリブル」を卒業するとその抽象的な表現にはほとんど戻れなくなります。

2歳頃から、ぐるぐる描いた線を描き終わってから眺め、何かに見立てるような活動が始まります。始めはできた線に対して、それに見えるものにたとえていくような感じです。皆自信を持って、「みてみて〜」とぐりぐりの線を見せてくれます。


ぐるぐるの線もとても良いモノです。

線の勢いや、色合いが素敵だったり、「車〜」といいながら手を一生懸命左右に動かしたことで生まれてきた線など、そのプロセスを知っていると余計に、それらは良い絵に見えてきます。


ただ、子どもたちは自然と、徐々にぐるぐるではないモノを描くようになります。ぐるぐるして、なにかのイメージを後付けする段階から(ぐるぐるの中に「これママ」というのがあったりもしますよね)、だんだんと目鼻口がわかるような「ママ」となって、身近な何かをイメージしてから描こうとするようになってきます。


わかりやすい形が出てくると、見ている大人としては「成長!」と感じるわけで、「上手!」と、それまでとはまるで違うリアクションをとってしまったりします。子どもの成長はそれは本当に嬉しいものです。褒めちゃいけない訳ではないのですが、褒められれば子どもたちもとても嬉しく感じます。ぐりぐりじゃなくて、これがよいモノなのだなと思うようになります。


そういった経験の中で、具体的なモノが描ければ上手に描けた!ぐりぐりは赤ちゃんのやること、と子どもたちにとってもぐりぐりは早く卒業すべきモノと判断するようになってくるのではないかと思います。


実際に、ぐりぐりから具体的に他者が見て「かお」だなとわかるような具体的な形が出てくる年齢はお子さんによって本当にばらつきがあります。遅いからダメなわけではありませんし、早いから優れているということでもないように思います。

ただ、その差はわかりやすいので、他の子はもうぐりぐりを卒業しているのにと我が子の発達を不安に思われる方もいらっしゃいます。こどもが小さいときには、首が据わった!寝返りした!つかまり立ちした!笑った!、言葉を発した!と次々と成長が見られて、またそれが他の子はもうこうなのに。と焦るような気持ちになるモノだとおもいますが、そこは焦らずドンと構えていて大丈夫です。

遅かれ早かれなものです、遅かれ早かれおむつは卒業できる、と同じように、遅かれ早かれ具体的な絵は描けるので、その早さを気にする必要は無いと思っています。





ということで、ぐるぐるを卒業している他のお子さんの絵を見て「○○ちゃんは上手ね」というのも割と要注意発言だったりします。


美術教育では基本的には「上手」が声かけNGワードとなっています。それは絵に序列をつけてしまうからです。これはいいけど、あればダメなんだ、と子どもたちに思わせてしまう発言には気をつける必要があったりします。上手の代わりにシンプルに「素敵」「良いね」「かわいい」「かっこいい」でも良いですが、もうすこし突っ込んで見てあげられればなお良しです。


では、絵を見たときにどんな風にコメントすればよいのか、迷うと思います。あまり絵を批評したり、絵のことを考える機会は日常的にあまりないですからね。


良いなあと思ったところはどこなのか少し具体的に伝えるだけで大丈夫です。なんとなく良いなあと思う場合、なんとなくしか見ていない可能性もあるので、まずは良く見てみることをお勧めします。そしてで良く見て、良いところを探す様心がけてみると良いかもしれません。

「○○ちゃんの絵は色がきれいだなあ」とか「あの絵はたくさんの色が使ってあって良いねえ」「あれは、丁寧な感じで良いなあ」「ギザギザとか、まっすぐとか、丸とかいろんな線があるね」「大きく描けてて好きだな」「○○と○○の組み合わせが面白いね」


とかそのような絵の状態を言語化して、「色」「形」「アイディア」のこんなところが「すき」「きれい」「面白い」と言った具合です。


もしも、褒めるきっかけになるところが見つからないぐらいほど少し、あるいはほとんど描いていないという場合は、「描いてないねえ。なんかあった?」と描いていない理由を聞いてみると良いかもしれません。絵を描く事とぜんぜん関係なく、その時お友達と喧嘩してしまったとか、お腹がすいていて全然力が出なかったとか、本人には言葉にできない理由もあるかもしれませんが、何か理由がわかることもあると思います。


「それへん」って言われたとかそういったことがあれば、励まします。「どんな絵でも何か描けたら素敵だと思うなあ」と貼り出されている絵に関心を持つことも、こどもが絵を描くモチベーションにつながります。





絵が嫌いにならないため、楽しく描ける環境作りとして、大人がどう絵を見ているか、どう評価するかというところの観点から書いてみました。


これで、絵を好きじゃなくなる積極的に描けなくなる理由の1,3,4はある程度解決できるのではと思います。ただ、2,に関してはこれは人生誰でも思い通りの出会いができるわけではありませんので、最近の言葉ではガチャというのでしょうか。直接関与することは難しいこともあります。

ただ、指示通りにやらないと叱られるという教育方法は現在では、図画工作や美術科としては否定されています。現場でそういった対応が残っている所もあると思いますが、徐々に改善される可能性があると思います。

また、集団生活の中で、思い通りに行かないことはあるものだと思います。前向きに考えるとすると、集団生活の環境はだいたい1年単位で変化することも多いので、お家でのびのび描いたり作ったりできる環境を整えてみたり、声かけなどで、モチベーションが保てるよう工夫することはできると思っています。


では、次は絵に序列をつけない環境で、どんな風に絵を描いたり表現をすることに向かわせるか。ただ描こうということで、いつでもできる子もいればもちろんそうでない子もいます。内容にも色々工夫が必要だと思いますので、制作への取り組み方について書いていこうと思います。






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